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第100回

「そんなモンさ、GLAY自体に問題がある訳じゃないし、要は円滑に活動できる場所や仕組みを作れる人間がいればイイんじゃないの?」
「まぁ、そりゃそうですけど、音楽業界の誰もがビビっちゃって誰も手なんか貸してなんてくれませんよ。実際、こういう流れを察知した時に周りの人間が誰一人いなくなっちゃったし… 知り合いの色んな業界の人にも相談しましたけど、結局は誰も相手にしてくれなかったですもん」
「だからさ、そういう事も含めて何でも出来るヤリ手が一人でもいればイケるんじゃないかって言ってんのよ」
「え?誰かいるんですか?」
「俺だよ、俺。それこそカバン持ちでも何でもやってやるぞ。アハハ」
「は?!ナニ言ってんスか?だってTOKIさん自分の会社があるじゃないですか?しかもアレでしょ、今度ビル建てるとか言ってたじゃないですか?軌道に乗ってるんでしょ?」
「いや、こういう状況ともなればビルなんか要らないよ。会社の方は俺無しでも何とか稼動はすると思うけど無理っぽかったら閉めたって構わない。従業員には申し訳ないけど知人の同系列の会社を紹介して就職の問題はクリア出来るし…まぁ勝手な言い分かもしれないけど俺の会社を俺がどうしようと、それは俺の勝手にさせてもらう。ビルの為に貯めてある金があるから2〜3年は何もしないで楽勝で食っていけるし…、てか大体さ、そんな事イチイチ心配すんなよ」
「いや、でも!」
「まぁ、聞けよ」

TAKUROの言葉をTOKIは制止し、その胸の内を明かした。

「実は俺さ、6年前に起業する時に母さんに前もって一つだけ言ってた事があるんだよ。俺は何としても会社は軌道に乗せる。けど、もし万が一、万が一TAKURO達が困った時が来たら、その時は母さんにも苦労させちゃうかもしれない。それだけは解ってねって言ってあるんだ。だからさ、俺の事は他人だと思うなよ?俺はお前自身だと思ってくれていい。俺の身体は自分の身体だと思って何でも言えよ」
「TOKIさんに、そんな事させられないよ!」

TAKUROは大きく声を上げると頭を抱えてうずくまった。

「お前が困ってんのに指くわえて何もせず放っといたっていう方が俺にはよっぽど辛いんだって。あ!自慢じゃないけど俺はお前んトコのお偉いさんにレーベルの社長になってくれってお願いされた男だぞ?あとウチの会社の成長を見てくれれば分かると思うけど、俺は、まぁ自分で言うのもナンだけど、かなりヤリ手だと思うんだけどな…」
「TOKIさんが仕事が出来るなんてのは誰もが知ってますよ!」
「ならイイじゃない?」

TOKIの言葉に押し黙るTAKURO。

TOKIは続けた。

「お前はいつでも俺を助けてくれたじゃないか。たまには俺にもカッコつけさせてくれよ?」
「…じゃ、もし、もしですよ?俺、もうちょっと頑張ってみますけど、どうしてもダメだった時、その時は力を貸してくれますか?」
「俺はお前自身だって言ってんじゃないの。俺の意志も環境も一切気にする事はない。お前が「やれ!」って言ったら、どんな事でも100%必ずやる。俺に無理はない!って知ってるじゃないの?」
「そうでしたね」
「こういう時はホラ?」
「盛り上がってきたね〜!でしたっけ?」
「そうそう!」


STEALTH「アルストロメリア」のプロモーションの為に二人で出演した深夜のFMラジオでTAKUROの口から明かされた回想録。

この日の事を後日、TAKUROは言った。

「ああいう時にTOKIさんが支えてくれて、あんな言葉を言ってくれたってだけで、自分の人生は間違いじゃなかったと確信できた。その誇りが、これからのGLAYを支えていく大きな力になった」と。

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