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第104回

時は2007年を迎えた。

畑氏から聞いた施設の窮状が気に掛かる。

TOKIはインターネット等を通じて福祉施設で暮らす子供達に対して国はどういう政策を採っているのか、また、現場の窮状とは如何なるものなのかを調べ上げては現実の厳しさを思い知らされ、それらを知る度に胸を痛めていた。


そんな日々の中、立ち寄ったCDショップでGLAYの新譜を購入。

友人であるが故に貰ったりはしないで、TOKIはいつも応援の意味も込めてGLAYの新譜は購入するようにしていた。

封を開け、歌詞カードを見ながら聴く中で、ひときわ異彩を放つ曲のタイトルが目に付く。


その曲「僕達の勝敗」


歌詞カードを見ながら、大人達の勝手な都合に翻弄される子供達の運命に対し、人の非力さを訴え、葛藤するその曲を聴き、(アイツも同じような事を考えているんだな…)という思いに溢れた。

それはどこか嬉しく、曲を聴き終えた時に(俺だけじゃないんだ)という思いに溢れた。


(やっぱ、音楽って良いもんだな…)


TOKIはもう歌わない。

けれど、自分と同じ事を考えている無二の親友が自分の気持ちを代弁するかのような音楽を奏でていてくれる。

TOKIはそれで十分だった。



夏の足音が近付き始めた5月。



mixi内でTOKIの存在が、かつてのファン達に知られ始めていた。

彼らから毎日のように送られてくるTOKI宛のメールの中にTOKIと交流があったバンドの解散を知らせるメールがあった。

(あぁ、解散するのか…)

TOKIは、久しぶりにそのバンドマンにメ−ルを送った。

すると「解散はしたけど、もう一度だけアンコール的なライブをやるから見に来て欲しい」との返信があり、TOKIは躊躇したが(まぁ、最後だしな)と久しぶりにライブハウスに足を運んだ。


時は6月5日。会場は新宿ロフト。


この日がTOKIの運命を大きく変える日となる。


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