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第16回

旅行当日。

TOKIを含める男三人は待ち合わせの場所である私鉄の駅のホームに向かう。

「なぁ、あの子らの水着はなんだろうな?」

長谷川が菊池に話し掛ける。

「睦美はビキニって言ってたな。あんまり見るんじゃねーぞ!」
「わかった。わかった。」

そんな他愛の無い話をしながら待ち合わせ場所に到着。

時計を見つめる。

ほどなく、女子三人が到着。

夜間学校というシチュエーションでしか見た事の無い、つまり夜でしか見た事のない彼女らの姿は、夏の陽射しに照らされている事も相まって、一層の輝きを放っていた。

「お待たせ〜!」

菊池を見て破顔する睦美。

睦美に負けずとも劣らない笑顔の麻美と静香。

「ちゃんと親御さんの了解をだな…」

と彼女らに問いかけるTOKIに

「お前はオッサンくさいんだよ!」

と全員にツッコまれる。

爆笑する駅のホームの一角。

TOKI15歳の夏、無邪気な子どもから、否応なしに大人になっていく境界線。

そんな貴重な夏の一コマだった。

電車が動き出し、流れる景色。

立ち並ぶビル群から立ち並ぶ民家へ。

立ち並ぶ民家も次第に疎らになっていき、それを埋め尽くしていくように景色が緑色に染まっていく。

車内に立ち込めていた街の香りも、いつの間にか心地良いマイナスイオンに包まれていく。

電車を乗り継ぎ、乗り継ぎ、目的地の駅に到着。

予約してあった旅館を目指す。

見も知らない質素な街並み。

どこか懐かしさを覚える店構え。

横には仲の良い友人達。

TOKIは旅行の楽しさというものを満喫していた。

「あ!ココだよ!ココ!」

予約していた旅館を発見。

早速チェックインを済まし、部屋に荷物を置く。

「さぁ!早速海に行こうぜ!」

泳ぎの得意な菊池は逸る気持ちを抑えきれないらしい。

それに呼応して全員が水着を着込みだす。

「アッチ向いててよ?」
「う、うん」

女子に言われ、ドギマギしながら壁とにらめっこをするTOKI。

「お待たせ!コッチ向いて良いよ!」

目の前には水着姿の睦美、麻美、静香。

女性というモノをまだ知らないTOKIには、あまりに刺激的な状況だった。

「あ!静香ちゃんを見てるな〜」

睦美がTOKIをからかう。

「いや!見てないよ!」

とハッキリ訴えるTOKIに

「ヒドい…」

と静香がうなだれる。

「いや!そういう意味じゃなくてっ!」
「あぁ〜!可哀そう〜」
「いや、だって…!」
「アハハハ!まぁまぁ、それより早く海に行こうぜ!」

菊池のフォローを合図に全員が海に向かった。

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