prev
next
第23回

夏休みも終わり、学校が始まる。

TOKIと静香は夏休みの間、仕事が終わったら毎日のようにデートを重ねていた。

学校が始まると、TOKIは自転車で静香を迎えに行き、自転車の後ろに乗せて通学する事にした。

学校。

静香との毎日の楽しさの余り、すっかり忘れていた存在。

井浦。

静香の前の恋人。

巻き戻る記憶。

静香の痴態を大げさに言い触らしていた男。

かつて静香が交際していた男。

自分の静香を辱めた男。

TOKIは急激に怒りに震えた。

無論、二人は恋人同士だった。

それはわかっている。

わかってはいるが、その怒りの衝動はTOKIの常識とか良識を軽く吹き飛ばしてしまうほどのモノだった。

井浦に詰め寄るTOKI。

「おい!お前!」
「あ?お前って誰にモノを言ってんだ?」
「お前だよ、お前」
「テメェ後輩のくせに!」
「うるせぇ!表に出ろ!」

校内の騒動に教師が駆け付ける。

「何をやってるんだ!」
「何でもありませんよ」

TOKIはそう言って、さっさとその場を立ち去った。

全ての授業を終えた瞬間、走って教室を出て、下校する井浦を待ち伏せた。

しかし、井浦はTOKIの只ならぬ雰囲気を察知して裏口から下校したらしい。

翌日。病気と嘘をついて仕事を休んで、電話で井浦を呼び付けた。

「一体、何んなんだよ?」

と問いかける井浦を無視して

「土下座して謝れ」
「は?何で俺がお前に謝らなくちゃならないんだよ?静香の事か?お前達付き合ってんだってな。だけど、俺にはもう関係の無い事だ」
「するのか、しないのか?どっちだ?」
「わかったよ。確かに俺が悪かったよ。でも、あの時、俺と静香は付き合ってたんだぜ?あの時の事を、お前にとやかく言われたくないけど、確かにちょっと調子に乗りすぎたよ。すりゃ良いんだろ?すりゃ」

溜息交じりに土下座をする井浦にTOKIはキレた。

顔面を蹴り上げた。

殴った。

髪を掴んで引き擦り回した。

踏みつけた。

殴った。

殴った。

数え切れないほど殴り付けた。

全身血塗れの井浦。

顔面が変形しているのが興奮状態でもわかった。

気がつけば死人のようにピクリとも動かず、グッタリして倒れている井浦を放置してTOKIはその場を立ち去った。

prev
next