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第24回

陽が落ちかけた頃、自宅に帰り、皮が剥け出血している拳を消毒し包帯を巻き付けた。

母が驚いて問いかける。

「どうしたの!その手!」
「何でもないよ」
「何でも無いわけないでしょ!」
「何でも無いったら!」

殺気が収まりきっていないTOKIの怒声に母は、それ以上、何も聞いてこなかった。

…夜。

排気音の大きい一台の車が家の前に停まった。

TOKIの家の玄関の扉を激しく乱打し、怒声を上げる男。

「おい!早く出て来い!早く開けろ、この野郎!」

玄関を開けるTOKI。

目の前には顔を真っ赤にしてTOKIを睨みつける男。

その背後に全身を包帯で包んだ井浦がいた。

拳に包帯を巻き付けているTOKIを確認した上で

「テメェか!俺の弟をこんな目に遭わせやがったのは!」
「あ?うるせぇから家に上がれよ」
「テメェじゃ話にならねぇ!親を出せ!親を!」
「親は関係ネェだろうが!とにかく迷惑だから、さっさと上がれ!」

男は井浦の兄のようだった。

井浦も兄に促され家に上がる。

ソファに座るなり兄が口を開く

「とにかく!何があったか知らねぇけど、やり過ぎなんだよ!見ろ!コイツの顔を!」

包帯を取る兄。

無抵抗の井浦。

包帯の下の顔の殆どが紫色に変色して腫れ上がっている。

片目に関しては眼球が完全に見えないくらい腫れ上がっている。

「どう責任取るんだ?お?」
「責任?知らねぇよ、勝手にそっちでやってくれ」
「フザけんな!医者代だってかかってんだよ!」
「金か?金なんかねぇし、あったとしても払うつもりなんか無いね」
「テメェ!」

その時、怒声が飛び交うリビングの扉が開いた。

「何やってんだ?」

TOKIの父が顔を覗かせる。

(チッ)TOKIは心の中で舌打ちした。

「なんだ?喧嘩でもしたのか?」
「お宅のお子さんにウチの弟がこんな目に遭わされたんですよ!」

井浦の兄に説明を受けた父がTOKIに

「お前がやったのか?」
「ああ」
「そうか…」
「どうしてくれんですか?」

父の登場に鼻息の上がる井浦の兄。

その問いに対する父の答えは意外なモノだった。

「ガキの喧嘩にイチイチ第三者が出てくる事もないだろう?当事者同士に話をさせてみろ」
「え?でもそれじゃ…」
「俺も口を出さないからお宅も黙って見てろ」
「は、はぁ」
「ほら、話し合ってみろ」

と父がTOKIに促す。

TOKIは仕方なしに井浦に顔を向けて口を開いた。

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