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第51回

ある日の午後
「えへへ、来ちゃった」

と静江が病室に訪れた。

「?!何しに来たんだ!」
「いいの、私の勝手でしょ?」
「勝手?フザけんな!」
「もう何を言われても私は離れないからね。これから大変なんでしょ?私が助けてあげるから」
「…別れた方がお前の為なんだ。誰も巻き込みたくないんだ」
「私の幸せは私が決めるの。私がそうしたいの」

先日、あんなにヒドい事を言ったのに…。

何故、笑顔で会いに来れるのか?

こんなボロ雑巾のような身体になった自分のドコに惚れるというのか。

何週間も歩行しなかった為、足は痩せ細り、車椅子でトイレもままならない。

こんなミジメな姿は誰にも見せたくない。

誰の助けもいらない。

何よりTOKIは静江の重荷になりたくなかった。

しかし、拒んでも拒んでも毎日のように静江は見舞いに来る。

TOKIは次第に静江を受け入れるようになっていった。

(俺が元気になればイイんだ)

次第に感覚を取り戻していく身体が、TOKIにそう思わせるようになっていた。

しかし、そんなTOKIの思いと裏腹に告知されていた退院予定日が、どんどん延長されていく。

(何故?まだ、どこか悪いのか?)

理由の説明を求めても煙に巻かれる。

大体の予定でもいいから知りたい!と懇願しても、担当医の浜辺には思案顔で「いいから、俺に任せておけ」と誤摩化されてしまう。

苛立つTOKI。

TOKIは静江に頼んで医学書のような書籍を買ってきてもらい、自分の症状と照らし合わせた。

そんな中に思い当たる節のある症状があった。

TOKIは浜辺に「先生、俺って、ひょっとして、こんな状態なの?」と聞く。

「あ?なんだ?そんな本を買い込んで、素人に何がわかるってんだ?」
「でも、先生!」
「いいから!お前はドンと構えてろ!いつも見舞いに来る、あの子…静江ちゃんだっけか?あの子の為にも余計な事は考えるな」

自分が指摘した症状に浜辺は否定はしなかった。

TOKIは確信した。

自分が長生き出来る可能性は皆無に等しい事に。

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