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第8回

小学校を卒業し、中学校に入学する時期が迫ってきた。

学生服を着た自分を想像すると、少し気恥ずかしい気持ちと、大人に近付いたような気持ちが入り乱れて悶々とした日々を過ごしていた。

そして入学式。

視力が悪い事も手伝ってか、普段から目つきの悪いTOKIは入学式早々、同級生に喧嘩を吹っかけられて、殴り合いの大立ち回りをやってのけた。

喧嘩は一つ上の兄とも最近はしておらず、クラスメイトとはいえ、見ず知らずの人間を、いわゆる「暴力」と言える範疇で殴ったのは、この時が初めてだった。

自分から人を殴る事は無いが、ケンカを売られれば買う。

暴力というものを、そんなスタンスで捉えたまま中学校生活が幕を開けた。

多感な時期。

休憩中、教室で同級生の女子がアイドルグループの雑誌の切り抜きを持ち寄って談義に花を咲かせ、大抵の男子は髪型やファッションに気を取られている中、クラスの素行の悪い連中はバイクや地元の暴走族について熱く語り合っていた。

TOKIは、その全てに興味があまり持てず、適当に相槌を打って、その場を流していた。

物事に対して熱く語る事が、とても陳腐に感じ、同級生のそんな姿がTOKIの目には滑稽に映る。

「将来はこんな仕事に就きたい、こんな風になりたい」という事を考える事が特に嫌でたまらなかった。

医者、パイロット、レーサー、政治家、ミュージシャン、そんな花形の職業に自分が就ける訳が無い。

自分は下町の一般家庭の次男坊でしかない。

きっとそんな職業は幼少の頃から英才教育を受けられるような環境に生まれないとなれっこない。

そんな風に決め付けて、(将来はみんなサラリーマンにしかなれない。夢なんか見るだけ損ってもんだ)と、熱く夢を語る同級生に侮辱にも似た視線を投げかけていた。

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