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第90回

互いが互いの価値観を認め合えない。

そんな状態でKill=slaydの解散LIVEの日程が決まった。

奇しくも10月31日。

TOKIが29歳を迎える誕生日である。

会場は最も思い入れのある市川CLUB GIO。

TOKIは最後の最後まで「彼らが思い直すかもしれない」という期待を込めて、解散ではなく、活動休止という表記を採った。

そして迎えたライヴ当日。

楽屋で4人は一切口を聞く事も無く本編が始まった。

それぞれがそれぞれに、思いの丈をぶつけるライブ。

アンコールの声にも応える事無く、Kill=slaydは消滅した。

終演後も「サヨナラ」「お疲れ様」という言葉も一切交わさないままメンバーと別れた。

ライヴを見に来ていたTAKUROがTOKIを心配し、TOKIの自宅マンションにまで付き添う。

部屋で憔悴し切ったTOKIをTAKUROが精一杯励ました。

「いいじゃないスか!気休めじゃなくて今日のライヴでTOKIさんは100点満点だったよ。まだまだこれからッスよ!」
「うん…」
「まぁ、今は考える事が色々あるだろうけど、落ち着いたら電話下さいよ?待ってますから」
「うん、本当にありがとう」
「…TOKIさん、俺が曲を書くから歌ってみる気ない?」
「え?」

TOKIは聞き返した。

GLAYはこの頃、既に国民的な人気を誇っており、TAKUROの言葉に正直、驚いた。

「気を使ってくれて言ってくれてるんだろうけど、お前にそんな事させられないよ」
「俺がやろうって言ってんだからイイじゃない!嫌なの?」
「いや、嫌じゃないけど」
「TOKIさんの歌には何かを感じるんだよ。そうじゃなきゃ如何に親友でもそんな事は言わないよ?」
「とりあえず、とりあえず素直にありがとう、とだけ言わせてくれ。情けないけど今は何にも考えられない」
「まぁ、いつでも俺がついてますから、ドーンと構えてて下さいよ!近々、俺ン家で曲の選考会ね。電話しますから」
「あ、あぁ…ありがとう」

TOKIは、その夜を最後に「Kill=slaydのTOKI」ではなくなった。

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