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第92回

ファンクラブの残務処理も終了し、ホッとしたのも束の間。

TOKIは実家を支えるべく思案を張り巡らした。

月に2〜3万円の仕送りをした程度で凌げる窮状ではない事は母から聞いていた。

最低でも年間に100〜200万円の援助が無ければ日常生活に何らかの支障が出る事も。

TOKIは母に働かせたくなかった。

結婚した当初から父方の祖父母と同居し、仕事が長く続かない父を支えながら4人の子供を育て、子供達が大きくなったと思ったら、痴呆気味となった祖父母の介助に明け暮れていた母。

母は一時だって泣き言一つ言わず、常に笑顔でいた、そんな母だけにTOKIは何としても母を支えたかった。

(いくら仕送りしたって仕送りは生活資金として溶けていくだろう。そうじゃなくて、生活に掛かるお金を恒常的に生み出す方法を考えなきゃダメだ)

レーベルオーナーとして辣腕を振るっていた時の経験が役に立つ。

TOKIは小さな事務所を擁したセレクトショップを用意し、そこを母に任せ、軌道に乗るまで経営は自分が見る、という方法を提案した。

余談だが、TOKIはKill=slaydで活動中、様々な企業から「ウチに来ないか?」CDプレスをお願いしていた会社の社長からは「私が引退したら君に会社を譲りたい」等々、TOKIの人間性やビジネスセンスは関係する企業のトップ達に非常に高く買われていた。

親の為に用意した場所が、TOKIが持つビジネスセンスが最も花開く場所になろうとは、この時はTOKI自身でさえも気付かないでいた。

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